いよいよ明日から最終決戦、NBLプレーオフファイナルが始まる。5戦3勝方式のため昨シーズンのように第5戦までもつれる可能性もある、地獄の最終決戦である。

今シーズンの和歌山と東芝の直接対戦成績は、オールジャパン(以下AJ)も含めると和歌山が3勝2敗と勝ち越している。だが、AJは一発勝負のトーナメント方式であったし、AJ明けの直接対決は両チームの条件が異なるので参考にできない(和歌山は延期になっていた兵庫戦が前週に入った)。展開を占う上では、1勝1敗となった3月の直接対決が参考になる。

和歌山のホームで行われた第20節、先勝したのは東芝だった。しかし和歌山は翌日にはしっかりと修正し、オフェンスでは崩し方を変え、ディフェンスでも本来の持ち味を出して激しくプレッシャーをかけて勝利した。両チームの対戦はベンチワークが勝敗を大きく左右するようで、これが第3戦、第4戦と続くとなるとどうなるのか非常に楽しみである。

和歌山はこれまでの戦いを見ると、木下、パーカー、川村の出場時間がいずれも平均30分以上と突出している。特に川村は、最終節からのアイシン5連戦では平均40分を超えており、パーカーもほぼ40分出場している。和歌山にとっていかにこの二人が重要な選手であるかが良くわかる数字であり、彼らが和歌山の勝利を支えてきたと言えるだろう。

しかしファイナルはレギュラーシーズンとは全く異なる。幾度となくファイナルを戦った佐古賢一・広島HCは、いすゞの選手時代、極度の疲労から1998-1999ファイナルのロッカールームで全身けいれんを起こして倒れた。またアイシン時代には、2004-2005ファイナルのゲーム中にアキレス腱を断裂し、試合途中でコートを離れた。独特の雰囲気と極度の緊張感が、必要以上に選手の体力を消耗させるのだ。

和歌山の川村は、カンファレンスファイナルにおいてピリオドの終盤になると肩で息をする姿が何度も見られた。中務やリカートが走り回ってかき回している間、川村はあまり動かず体力を温存し、ゲーム終盤には攻守でファウルを貰ってゲームを切りながらなんとかコートに立っていた。

これまではそうやって乗り越えてきたが、東芝との中1日の5連戦ということになると、そうもいかないだろう。和歌山としては早めに主導権を握って有利にゲーム展開し、早めに3勝して決着をつけたいところだろうが、簡単にいかないことはジェリコHCも十分わかっているはず。どのような対策を練ってくるのか注目される。

一方の東芝は、全く違うプレーヤーによる2つのオプションと、その2つを組み合わせた3つ目4つ目のオプションを持ち、シーズンを通してタイムシェアしながら、全員が同じレベルでプレーできるように調整してきた。状況によっては主力選手の出場時間が増え、体力的に苦しくなってシュートが落ち敗戦することもあったが、それも修正点としてきちんと把握している。たとえ5戦目までもつれたとしても、最後まで戦い抜くだけの万全の準備を整えているはずだ。

「気持ちのぶつかり合い」、「ベンチワーク」、「ポイントガードの出来」、「フォワード、センターの激しいぶつかり合い」、「ベンチプレーヤーの充実」。先日紹介したJBLファイナルのパンフレットに載っていた、ファイナルにおける各コメンテーターの注目点が今も変わらず的確であることがわかる。両チーム共に死力を尽くした戦いになることは間違いないこの戦い、最後まで見届けないわけにはいかない。