11月3日に秋田で行われたアイシンシーホース vs オーエスジーフェニックス東三河の試合をテレビ観戦しました。実はゲームレポートも書いていたのですが、ものすごく長くなってしまったので、それらを省いて感じたことだけを以下に書きます。
■OSG中村監督の思惑
以前にも書きましたが、OSGのエスティルはリーチも長いし体重もあるし、ペイント内ではまず無敵でしょう。しかし弱点もあります。それはペイント以外では殆どプレーしないことと、走れないことです。なのでOSGはマンツーマンディフェンスは出来ません。かといってお家芸のマッチアップゾーンで守ると、4Qには選手がバテてしまうので、前の試合の反省から2-3ゾーンディフェンスという選択になったのではないかと思われます。
ゾーンディフェンスだと場所を守るのでマッチアップゾーンに比べて運動量が減り、体力を温存できます。しかもゴール下にはエスティルという番人がいるので、リバウンドも取りやすい。ディフェンスで体力をセーブして、リバウンドを奪い、速攻で得点するというパターンが中村監督の描いた作戦だったのではないでしょうか。速攻で得点するとエスティルも戻らないで済むので、彼の体力も温存できます。
速攻を出すことが出来なければハーフコートでエスティルに攻めさせ、駄目ならパスアウトして外から射抜くというオプションも上手くいき、OSGは11点差をひっくり返しただけでなく、3Qの後半まで常に優位にゲームを進めることが出来ました。23点リードしてもじっくり攻撃しなかったことが不思議だったのですが、もしかしたらハーフコートオフェンスにすることでアイシンのリズムになることが怖かったのかもしれません。
しかし3Qの終わりから4Qにかけて、少しずつOSGの歯車が狂い始めました。殆ど出ずっぱりのスターター達には疲れが見え、シュートも落ち始めました。加えてエスティルのマークマンが桜木からランプリーに変わったことで、エスティルにボールが入りにくくなりました。さらに司令塔のホーキンスが個人プレーに走るなど暴走し始めると、アイシン鈴木監督は、ここを勝負どころと捉えたのか、すかさず佐古を投入しました。
佐古を投入されてOSGの中村監督は気が気でなかったでしょうね。解説の塚本さんが仰っていた「ごまかし」が完全に崩壊する前に逃げ切ってしまいたかったに違いありません。最終的にOSGは2点差で勝ちましたが、翌日のゲームは落としました。しかしアイシンから一つだけでも星を取れたことは、中村監督にとって大成功だったのかもしれません。
■ゾーンディフェンス攻略
一方のアイシンは、マッチアップゾーン攻略の練習をしてこのゲームに臨んでいたとしたら、OSGの2-3ゾーンにかなり面食らったでしょうね。巧者アイシンは意外にも攻めあぐねていましたが、これはエスティルの高さを意識してしまってのことだと思います。パナソニック戦を見て気付いたのですが、エスティルの片腕の長さは同じ身長の選手に比べて10%くらい長いと思われ、この高さは相手チームの選手にとって、かなりの心理的プレッシャーになると想像できます。
しかし、コート上にいるOSGの選手で高いのはエスティル一人なので、例えばボールをコーナーに落して視線を一方向に向け、エスティルの出てこないミドルレンジからシュートを狙い、ブラインドサイドから大型選手が合わせやリバウンドに入ると、突破口も見えてくるのではないかと思うのですが、そんなに簡単なものではないのでしょうか。
■アイシン鈴木監督が桜木を下げた理由
アイシン鈴木監督は3Q残り約5分で、パーソナルファウル3つの桜木をベンチに下げてそれ以降出すことはありませんでした。桜木はこの日、エスティルとのマッチアップで集中力を切らし、度々レフェリーにアピールするなどメンタル面の弱さを露呈していました。さらにリバウンドに飛ばないなどプレーも怠慢になったことで、戒めのためにベンチに下げたのではないかと思っていました。
しかしビデオを見返してみて、もしかしたら違う意図もあったのではないかという気がしてきました。桜木のエスティルに対するディフェンスは、エスティルにボールが入ってポストアップしてから止めるという手法でしたが、エスティルのパワーとリーチの長さにそのディフェンスは機能していませんでした。一方、桜木に替わって入ったランプリーは、エスティルにボールが入る前に、まずペイントに入れないというディフェンスをしていました。
これによりホーキンスはエスティルにボールを入れることができず、さらにホーキンスの暴走に拍車をかけることに成功しました。OSGの外国人選手は日本人選手とマッチしつつあると思ったのですが、状況が悪くなると日本人にボールを回さないということがわかりました。鈴木監督がそこまで考えていたかどうかはわかりませんが、逆転こそできなかったものの、結果的にOSGの新たな問題を露呈することに成功したことになります。
翌日のゲームでは桜木が40分出場し18得点16リバウンド、ダブルダブルの活躍で勝利に貢献しています。鈴木監督にとって桜木は重要な存在であることには変わりなく、桜木もそれに応えるという形で軌道修正は完了しました。とすると、やはり鈴木監督はゲームを一つ捨てて桜木を戒めたのかもしれませんが、桜木外しの意図がどこにあったのかは監督本人に聞いてみないとわかりません。