JBL観戦記 パナソニックvs東芝

パナソニック対東芝第2戦。
第4ピリオド残り16秒。
72対71、東芝1点ビハインド。
チームファウルは東芝3に対してパナソニック5。
アウトオブバウンズの判定の後、東芝タイムアウト取得。
明けて東芝ボールでサイドラインからスローイン。
受け取った石崎はゆっくりとドリブルしたまま、木下の目を真正面から鋭く睨み付けた。
■第1戦
第1戦序盤、リードを奪ったのは東芝だった。バイオレット、宮永、菊池が素早い連続得点で8点の差をつける。しかしパナソニックは大野とカスタスが第1ピリオドだけで5本の3Pを沈め、あっさり逆転した。
第2ピリオドに入っても、カスタスに代わって入ったハニーカットが3本の3Pを決める。パナソニックのビッグマンがアウトサイドを高確率で沈めるので、東芝は必然的に外国人選手が外に引っ張り出されてしまいインサイドが手薄になってしまう。逆に東芝はアウトサイドがほとんど決まらないので外から打てず、かといって青野やハニーカットの居座るインサイドに切れ込むスペースも作れない。結果個人プレーでなんとか得点するしか術がなかった。
第3ピリオドに入り東芝はバイオレットと石崎が得点するも、パナソニックはカスタス、木下が連続で3Pを決め、差は縮まるどころか開く一方の展開。ここでトラブルが起きる。ボールのないところでカスタスと石崎が接触。石崎は右目の上をカットして激しく出血し交代。代わって入った節政、菊池、加々美が奮起し5点差まで縮めるも再度差を広げられて、13点差で第3ピリオド終了。
第4ピリオドに石崎が帰ってきても、縮まっては開く差を詰められない東芝は、バイオレットが入らない3Pを乱打して終了。パナソニックのチームワークの良さと気迫のディフェンスが東芝に何もさせなかったゲームだった。東芝バイオレットは試合後、コートで両手を体側に付けたまま、四方に向かって深々と頭を下げていた。
■第2戦
前日敗れた東芝はゲーム前から気合十分。今後の日程を考えると首位チームから1つでも勝ち星を奪っておかないと後々苦しくなるので、何が何でも勝たなくてはならない。第1ピリオド序盤、東芝宋が奮起しリードを奪うが、パナソニックも大野が連続得点して喰らいつき、あっさりと逆転に成功。第1戦と同じ展開になるかと思われたが、残り2分で青野が3つ目のファウルを犯し交代。ゴール下の番人を追い出すことに成功した東芝だったが、集中力を切らさないカスタスを止めることができず、差を詰められない。
パナソニックは青野を失ったものの、永山の連続8得点などで東芝に主導権を譲らず第2ピリオド終了。今日も昨日と同じ展開かと東芝応援席に落胆の色が見える。
第3ピリオド、パナソニックはハニーカットが攻守に奮闘する一方、東芝は5分を過ぎても6点しか取れず、この日最大の19点差が開く。たまらずタイムアウトを取った後東芝は、激しいディフェンスからの速攻が決まり始め、何とか1桁得点差で第3ピリオドを終えた。
第4ピリオド、ここまで我慢を重ねてきたパナソニック清水監督がついに青野を投入。東芝バイオレットは飛ばされても弾かれても果敢に青野に勝負を挑み、得点を重ねる。そして残り5分、ついに青野が5ファウルで退場。残り2分を切って東芝宮永がようやくこの日2本目のシュートを決めて3点差にしたところで、パナソニックタイムアウト。
タイムアウト明け、パナソニック木下が決めて再び5点差。残り57秒、東芝菊池がスティールし速攻に走る。追うパナソニック広瀬。レイアップに飛ぶ菊池に広瀬が接触し、二人は客席にもつれ込む。ファウル判定の後菊池がフリースローを2本決めて3点差。パナソニックは木下が時間を使ってシュートするも入らず、東芝石崎が速攻に走る。猛スピードで戻った木下がレイアップに行く石崎の腕を叩いてファウル。残り27秒、パナソニック5ファウルで最後のタイムアウト。
タイムアウト明け、東芝石崎がフリースローを2本決めてついに1点差。パナソニックのエンドラインからのスローイン。リングの台で見えなかったのだが、木下にボールが渡るところで東芝石崎が激しくディフェンスしたようで、ボールはラインを割って東芝ボール。石崎が木下のファウルを主張するも通らず。東芝田中HC2つ目のタイムアウトを要求。
■ワンショット・キル
タイムアウト明け、サイドラインからのフリースロー。センターサークルからリングに向かってやや右寄りの位置で石崎はボールを受け取った。時計が16秒からカウントダウンを始めるが、石崎はゆっくりとドリブルしたまま木下の目を睨み、全く動き出す気配を見せない。14秒・・・13秒・・・12秒・・・10分の1秒カウンターが目まぐるしくカウントダウンする。
1点差、相手は5ファウル、残り16秒、普通ならとりあえずボールを回しながら攻めて、得点できなくてもファウルを貰ってフリースローを得ることを考えるだろう。その後残り2つのファウルを使いながら時間を削っていけばいい。しかし、東芝田中HCの指示はそうではなかったようだ。
残り10秒を切った頃だろうか、石崎がひとつ右にフェイクを入れた。ドライブを警戒したのか木下の重心が左に寄り、右足が前に出る。石崎はすかさず左へクロスオーバーし、リングへとドライブを始めた。木下が一歩遅れて右へ飛び出すと、石崎は今度はビハインド・ザ・バックで左へ切り返す。
木下は重心が上がったままでも石崎に付いて行こうとし、カスタスが石崎の目の前へカバーに飛び出す。すると石崎はドライブを止めて、ステップバックしてフリースローライン辺りへ戻り、二人を完全に引き離した状態でジャンプ。少し前のめりになりながらも空中で姿勢を整えながらシュート。試合時間残り2秒、ボールはリングへ吸い込まれた。
パナソニック大野がすぐにエンドライン付近からボールを投げるが、リングに入らずゲームセット。ファウルもない、誤判定もない、あまりにも美しすぎる幕切れだった。石崎に全幅の信頼を寄せる田中HCと、その信頼に応えた石崎のプレーが感動的すぎて、何故か僕の目からは涙が溢れ出ていた。
東芝応援席からは爆発的な歓声が、パナソニック応援席からは悲鳴が轟いた。東芝の選手達がコート上で抱き合っている。川崎市の試合で最後のフリースローを2つ落としたバイオレットは、青野との肉弾戦に挑み続け、ついに得た勝利を全身で喜んでいる。
このとき確信した。東芝はもはや石崎のチームだ。オフェンスもディフェンスも真面目に取り組み、自らがチームを引っ張っている。昨シーズン「もう少し使ってほしい」とこっそり不満をもらしていたルーキーは、いつの間にか監督からもチームメイトからも信頼を得られる選手に成長していた。僕はそのことが嬉しくてたまらなかった。
試合後、パナソニックの広瀬選手が僕達の元へダッシュでやってきた。第4ピリオドに菊池選手と接触して僕の元へ飛んできた彼は、僕達家族とぶつかったことで怪我がなかったか心配して来てくれたのだ。すごく嬉しかった。地元大阪のチームであるパナソニックのことが、またちょっと好きになった。

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1 Comment

  1. らこ

    私もこの試合を見て泣きそうになりました。
    日曜の試合でしたがまだ興奮しています(笑)
    本当に観に行ってよかったと思える試合でした。

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