昨日に続いて最終戦の第2戦を観戦してきた。東芝は第1戦で15勝10敗としたものの、OSGが日立戦で外国人選手を出場させずにわざと負け、セミファイナルで日立と戦おうという作戦に出たため、今日も負けるわけにはいかなくなってしまった。そのせいもあってか、コートに並んだスターターの選手達の表情には緊張感が見られる。しかし、それは幾度となくプレーオフを戦ってきたときと同じ表情であり、気負いの心配はなさそうだ。
試合が始まると松下は昨日と同じく飛ばしてきた。とにかく#6永山の動きがよく、絶対に負けたくないという気持ちが伝わってくる。#42フレッチャーもゴール下だけでなくトップから迷いなく3Pを決めるなど、攻撃の手を緩めない。東芝は#6クラインシュミット、#5ルイス、#8節政の得点、#10志村と#55伊藤の2メン速攻などで食い下がるが、厳しいファウル判定などもあって攻撃が続かず、点差を縮めることが出来ずに32-40の8点差で2Qを終えた。
リードされて前半を終えたが、僕は昨日のように後半のスタートですぐに逆転できるだろうと思っていた。しかし後半始まってすぐに、ドリブルで走った#51北が後ろから突き飛ばされ転倒したにもかかわらずノーホイッスルだったという不可解な判定があり、東芝は完全に出鼻をくじかれてしまった。これ以降も東芝はファウルを取ってもらえず、逆にリバウンド争いの際に#6クラインシュミットがテクニカルファウルを取られた。観客席からは良く見えなかったのでその理由はわからなかったが、東芝のベンチ前での出来事だったことで、不可解な判定に鎌田HCが審判に大声を上げて猛抗議した。
東芝は審判に対する不信感からか嫌なムードを払拭することが出来ず動きが悪くなり、最大17点差まで広げられてしまった。このまま、また日立戦の時のように崩れてしまったらどうしようかと思っていたのだが、何がどういう理由でか、突然#6クラインシュミットのエンジンが始動した。ドライブでファウルを誘い、ゴール下でリバウンドをもぎ取り、3Pを沈め、点差はどんどんと縮まっていった。逆に松下のシュートは次第に落ち、選手の表情にも焦りが見え始めた。3Qを終わってみると57-60の3点差まで詰め寄っていた。
4Qでさあ逆転だ!と思っていたら、無得点のまま7点差まで広げられてしまった。ここからなんとか3点差まで追いついたところで、#8節政の3Pで70-70の同点に。さらに双方得点を重ね一進一退の攻防になったところで事件は起こった。フリースローラインあたりから#6クラインシュミットがシュートを放った際に、その前にバンザイして仁王立ちしていた#31青野がファウルを取られた。まったく動いていないのに、だ。これはサイドライン約2mの距離で見ていた僕の目の前で起こったことなので間違いない。
今度は松下が審判に猛抗議だ。#6永山は悲しいくらいに食い下がっていたが、判定は覆るはずがない。松下のチームファウルが5つを超えたところで#6クラインシュミットがフリースローを2本とも決めて79-77。残り20秒、タイムアウト後松下ボールで再開。チームファウル数に余裕のある東芝は激しいディフェンスで#6永山へボールがわたるのを阻止しながら、残りファウルを有効に使ってプレーを切り時間を削っていく。残り2秒、ゴール左下の#31青野にボールが渡りミドルシュートを放つがリングに嫌われ、#11折腹がリバウンドを取ったところでゲームセット。
心臓に悪いゲームだったがなんとか勝つことが出来た。2点差でも勝ちは勝ちだ。今日は東芝の本来の強さが見えた。それはランニングプレーにおいてだ。今日の東芝は後半よく走っていた。意外ではあるが、最近の試合では東芝のランニングプレーはあまり見ていなかった。しかし今日は#51北、#11折腹はもちろんのこと、#55伊藤、#6クラインシュミット、#5ルイスなど大型選手もよく走っていた。その大型選手達に#8節政が#10志村がパスを出し、得点に繋げていた。ハーフコートオフェンスを得意とする東芝だが、走ればさらに強い。それを実感できた試合だった。
加えて今日の試合では#8節政のプレーに特に感銘を受けた。要所で素早いモーションからの3Pを沈めて点差を縮め、スティールからのワンマン速攻では、後ろを振り返って相手選手が追いついてこれないことを確認する余裕を見せた。3メン速攻では真後ろを走ってきた#6クラインシュミットにノールックバックパスを決めた。走り出してから一度も後ろを振り返らなかったのに、そこに彼が走りこんでいることは見なくてもわかっているようだった。節政ファンだと言っていた後ろの席のおばちゃんは、そのスーパープレーにビリビリしびれちゃっていた。
試合後、体育館の出口では松下の日本人選手たちが、並んで体育館から出てきた観客をお見送りしていた。毎年恒例のイベントでファンにはうれしいプレゼントだ。ファンは思い思いに握手をしたり写真を撮ったり、選手とのふれあいを楽しんでいた。その中に福岡からの移籍組である佐藤の姿が見えた。福岡の一連の事件は選手達にとって悲劇以外のないものでもなかっただけに、笑顔でファンと話す姿を見てなんだかうれしくなってしまった。僕は何か声をかけたくなったが、その勇気が出ずにそのまま体育館を後にした。外には春の夕焼け空が広がっていて、暖かな風が吹いていた。
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