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■ 終章

ブザーが鳴りゲームが終わった。一発勝負の決勝戦。この一戦にすべてを出し切った栃木の選手たちが、抱き合い、喜び、涙を流している。

栃木ファンの大歓声。レッツゴー栃木のコールの後に、GO GO THUNDERS のコールが川崎に送られる。

そして優勝セレモニー。肩を落としベンチに座り込んだ川崎の選手たちに、篠山キャプテンが起立を促す。

田臥がティファニー製のチャンピオントロフィーを高く掲げ、金色の紙吹雪が舞う。

やがて川崎の選手たちが立ち上がり、インタビューボードの裏で観客に深々と礼をする。準優勝チームの表彰式はない。敗者に送られる大きな拍手と声援。篠山が、永吉が涙を流している。

川崎の選手たちがコートを去った後も、コート上ではセレモニーが続いている。黄色いシャツを着た小学生くらいの女の子がコートの近くまで来て、喜ぶ選手たちの姿を見ている。

「おいで、せっかくだしもっと近くで見た方がいいよ」と声を掛けると、コートサイドまではやってきたものの、選手の近くまで行くのは恥ずかしそうにしている。「地元ということでは川崎側なんですけどね」とお父さんが申し訳なさそうに話す。

やがて観客も少しずつ会場を後にし始め、僕も席を立つことにした。川崎側のコートエンド席、赤のヘアバンドを巻いた男性が、目を真っ赤にしてじっとコートを見つめている。悔しい気持ちは痛いほどわかる。僕は東芝レッドサンダースの時代から何度も何度も、このシーンを見てきたから。

出口付近で、川崎ホームゲームのMCを担当されている高森てつさんを見かけ、おつかれさまですと声を掛けた。握手をして下さり、話しながら歩いていると、急に涙が止まらなくなってしまった。

2004年、JBLファイナルで東芝がアイシンに負けた後、フレッドと話した時もそうだった。誰かの手を握ってしまうと、向き合うことを避けていた感情が急に溢れ出てしまう。初対面のおっさんに手を握られて泣かれてしまっても、てつさんは優しく声をかけてくださった。

ファイナル会場の7割から8割は栃木ファンが占めていた。その大声援はすさまじかった。コートサイドにいても栃木の声援しか聞こえなかった。川崎も同じくらいの声援があれば、弾かれたボールもリングをくぐっていたかもしれない。そう思うと川崎の選手たちに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。勝たせてあげられなかったことが悔しかった。

駅への帰り道、選手バスの近くで多くのファンが選手を待っていた。やがて川崎の選手たちが出てきて、ファンと触れ合い、応援のお礼を言っていた。篠山キャプテンが川崎ファンの声援に応え、両手を振っていた。

最後に尊敬する友が現れて、少し言葉を交わした。「3戦、5戦やりたかったね」「まあ、ルールだから仕方ないね」。彼がバスに乗り込むのを見送って、会場を後にした。動き出したバスの窓から身を乗り出して、篠山キャプテンがファンに手を振り続けていた。

おわり