■ 序章
2017年5月27日、代々木第一体育館、Bリーグチャンピオンズシリーズファイナル。川崎ブレイブサンダースvs栃木ブレックス。
レギュラーシーズン60試合、プレーオフ5試合を戦い勝ち上がった2チームがこの日、たった1ゲームを戦い、優勝チームが決定する。会場の外には、見たこともないような数の人が列を作り、入場を待っている。そのほとんどが、黄色いアイテムを身に着けた栃木ブレックスのファン。川崎ブレイブサンダースのファンと思しき人は、残念ながらその1割ほどしか見当たらない。
荷物チェックを済ませて会場に入る。階段を下りてフロア席へ。まだ照明があまり点いていないコートでは、栃木のロシターが黙々とシューティングを行っている。やがて他の選手たちもコートへ出てきて、徐々にウォームアップを開始する。
川崎の選手たちは皆、どこか険しい表情。昨年のNBLファイナル第5戦の時とは違って、表情に余裕が感じられない。少し心配になるが、その緊張感が良い方に作用することを心の中で祈り続ける。
選手入場セレモニーがあり、両チーム整列の後、本格的なアップがスタート。
固い表情の川崎とは異なり、栃木の選手の表情には落ち着きが感じられる。中でも田臥は独特の空気を放っていた。気負うこともなく黙々とアップを続ける彼は、髪も髭も伸び放題。全国ネットの生中継があるというのに外見のことなど全く気にしていないようで、まるで山から降りてきたばかりの野武士のようだ。
定刻になり暗転、赤と黄色の光が客席を埋め尽くす。MCのカウントダウンに続いて、K-1さながらの煽り映像が流れ、会場のボルテージが一気に高まる。
忍者のような覆面を付けた男が二人登場し、それぞれ川崎と栃木の巨大なフラッグを手にする。大音量の音楽とともに照明が瞬き、レイザービームが踊り、フラッグが大きな炎のように舞う。そしてコート中央に吊るされた巨大な布が取り払われると、チャンピオントロフィーが姿を現す。
栃木のスターティングファイブが紹介される。会場の8割は埋め尽くしたかというほどの栃木ファンの、大声援が選手を後押しする。続いて川崎のスターティングが紹介される。先頭を切って登場した篠山が咆哮する。
10,144人の観客が見守る中、最後の戦いが始まる。
「第1Q」に続く
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